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百合キチ三平

百合漫画の書評やその他百合コンテンツ評、百合クリエイター評など

クラウドファンディングで育つ本格百合漫画誌「ガレット」が良い

 

 

 数々の百合漫画誌が休刊の憂き目にあった冬の時代を乗り越え、コミック百合姫の月刊化や「やが君」「citrus」のヒットなど、百合市場が活性化されてきたのを感じるこの頃。とはいえ先日、某人気百合漫画の打ち切りが発表されたりと、まだまだ油断できないのがこの業界。

 そんな中で先のコミティアで創刊号が刊行された百合漫画誌「ガレット」は、同人媒体の自主制作誌でありながら、その作家陣もさることながら品質のほうも、商業顔負けのクオリティを持った期待の百合漫画誌です。

 

galetteweb.com

 

 百合ヲタ声優としても知られる橘田いずみさんが原作を務め、作画を人気百合漫画家の百乃モト先生が担った連載作品を始め、参加クリエイターには竹宮ジン先生、天野しゅにんた先生、袴田めら先生、四ツ原フリコ先生、大朋めがね先生他、錚々たる面々。

 これだけの豪華なメンバーとなると、予算が大変なのではないか……と思ってしまうものですが、この「ガレット」が他の百合同人アンソロジーと決定的に違うのは、クラウドファンディングサイトによって制作費の支援を受けているところです。月額制のクリエイター支援用クラウドファンディングサイト「Enty」にて月100円のコースから支援を募っています。

「こんなにお金出してるのになんですぐ百合漫画誌死んでしまうん……?」と思い続けてきた百合ヲタ達は要注目。もちろん支援者へのリターンもあるので、気になる方は下記のリンクからチェックしましょう。

 

enty.jp

 

 クラウドファンディングによって作られて花開いた創作コンテンツといえば、現在大ヒット中の映画「この世界の片隅に」が記憶に新しいところですが、かねてより「同人作品だって有志から制作費を募っていいじゃないか」と思っており、実際自分でも行ったこともある私にとっても、こういった形で良質な同人作品に商品代金以上の経済的支援ができるのはありがたい限り。

 すでに5月の第二号発刊に向けての予告もされており、そこには百合漫画界の絶対王者森永みるく先生と、数々の名作百合を残して熱い支持を受けながらここ数年、百合漫画界であまり姿をお見かけしなかったあの乙ひより先生がW新連載をスタートするという、盆と正月が一緒に来たようなおめでたさ。特に乙先生の本格百合作品のカムバックには、運営のガレットワークス様に感謝の言葉しか出てきません。

 ここで「ガレット」創刊号の内容を漫画限定で一作ずつ、ネタバレ無しで軽くレビュー(敬称略)。

 

・百乃モト×橘田いずみ『リバティ』

 連載。毎日にマンネリを感じていたイケメン女子の真生が小悪魔風の女性と不思議な出会いをする第一話。まだ触りだけのエピソードなのですが、モト先生のタッチが小悪魔女性の魅力を濃縮に表現しており、今後の展開に期待できます。

 

袴田めら『ふわふわ・ふたしか・夢みたい』

 連載。少し意地悪な先輩から勉強を教わる後輩の話であり、ここからどう話を広げるのか想像できないところですが、大貫先輩の意地悪に後輩が振り回される、コメディタッチの展開となるのかもしれません。

 

・浜野りんご『CottonCandy』

 前後編の前篇。通学のバスでいつも一緒になる少女のひなこが気になる美似。ひょんなことから距離が縮まる二人の姿と美似の感情の機微を、定番の設定ながら独自のやわらかいタッチで丁寧に描いています。

 

・菅田うり『ゆるりふわり~ゆめのなか~』

 読切。付き合って三ヶ月になる女子高生カップルのお泊りの様子を、少しアダルトかつポップに描いている本作は、作風の可愛さもあいまってとても胸が弾むような感覚で読むことが出来ます。

 

天野しゅにんた『冬馬くん』

 読切。女子校で「みんなの彼氏」と呼ばれている人気者のイケメン女子・冬馬に、地味であることに苦しんでいる女子高生の華恋にある「きもちいいこと」をしてしまうこの作品。話の面白さはもちろん作者ならではの女子の胆力も味わえる一作です。

 

・明日部結衣『あのこの花がほしい』

 読切。人見知りな性格の春子は、正反対の性格を持った唯一の友達である夏希が先輩に告白している場面を見かけたことで自分の気持ちに気づき……という作品。ストレートな題材ではあるのですが、安定感に満ちた作品です。

 

・寄田みゆき『ピリアーとエロスのあいだ』

 連載。恋多きクラスメートのニカに片思いしているくるみは、あることがきっかけでその想いがニカにバレてしまい、そこからくるみの不毛な恋が始まるのですが、雰囲気的にこのままドロっとした方向に行ってしまうのか気になるところ。

 

・竹宮ジン『八重桜シンパシー』

 前後編の前編。小さい頃にヤンキーのお姉さん・八重に助けてもらった桜は、憧れの八重に会うためヤンキーとなり、八重が教師として働く高校に入学するものの……という本作。ラスト、後編への意外なつなぎに、教師×生徒好きとしても期待大です。

 

四ツ原フリコ『セックスしないと出られない百合』

 読切。百合厨の腐女子に「セックスしないと出られない部屋」に閉じ込められた幼馴染同士の女子二人を描いた作品。ド直球のタイトルと設定を楽しんでいたら、不意打ちのように叩きつけられる強烈な萌えの連発に、短いながら満腹感を味わえる一本です。

 

大朋めがね『視線』

 読切。孤立しがちなアオと彼女に片思いしている人気者のみゆ。中学時代のあることをきっかけにアオの機嫌を損ね、微妙な距離が生まれてしまった二人なのですが、その距離感や感情を視線に託して描いた本作は本著に於いて独自の世界観を放っています。

 

・やとさきはる『二人のアルカディア

 前後編の前編。自室を自分だけの楽園と呼んでいる女子大生の琴子は、合コンで出会った美女のつつじのことが気になり、ついには自分の部屋に招き入れ……といった作品なのですが、ドロドロにしてもハッピーにしても、どういう着地をするのか気になります。

 

・宇野ジニア『もくようび』

 読切。長年片思いしていた友人が結婚することになり、彼女のためにウェディングドレスを編むことになった女性の気持ちを描いている本作。せつなさと苦しみを残すシナリオながら、丁寧に編まれた作風でとても楽しめました。

 

 一読した感想としては刊行ペースも含め往年の百合姫を感覚を彷彿とさせる作品群となっており、路線の大きく変わった百合姫の、ある種では後継といえる本になりそうです。

 なお先行発売はコミティアではあるのですが、本日からネットや一部書店で一般発売が開始されました。比較的お手頃な価格の電子書籍版もあるので気になる方はチェックしてみてください。第二号の発売が今から待ち遠しいものです。

 

ガレット創刊号

ガレット創刊号