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百合キチ三平

百合漫画の書評やその他百合コンテンツ評、百合クリエイター評など

どこを読んでも萌えられる百合の展覧会ーー『百合百景』

 

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 表現の多様化や同性愛表現の一般化が進みつつある中で「百合には葛藤が必要だ」という言説は昨今古びたものになりつつあるのですが、SNSの定着に伴いありきたりな文脈の存在を超越したパンチ力のある萌え表現がさらなる価値を獲得していく現代において、はちこ先生の『百合百景』はまさに時代が招いた一級のパンチ力を備える作品だと言えます。

 

 

 『百合百景』はpixivやツイッターで高い評判を得る百合絵師、はちこ先生がネット上で発表してきた1~2ページの単発漫画をまとめた作品集です。累計閲覧数1000万超えだという作品の数々は、「好きな人にかわいいって言われたい女の子の百合」や「二の腕とおっぱいの柔らかさが同じか確かめる百合」、「先生を押し倒したいくらいかわいいと思う女の子の百合」など、まさに百合の展覧会と呼べるほどの百発百中萌える百合のオンパレード。

  セーラー服の女子同士(例外あり)による百合シチュエーションにおいて、百合作家界でもトップクラスの幅広い想像力と強いこだわりを持つはちこ先生。その中にいるキャラクターのほとんどは、シチュエーションや相手の行動に戸惑ったりすることはあるものの「女子同士であること」に対する迷いを持つことはあまりなく、それどころか恋愛感情も下心も含め、自分の気持ちにただただ正直なキャラクターのほうが多勢を占めています。それは単行本の帯に書かれた「想い、あふれて。」というコピーが的確に表現しています。

 単発的な表現というものは必要な情報がぐっと詰め込まなければ一方、どういった部分を切り捨てるのかいうのも重要になってくるもの。はちこ先生の生み出すキャラクターが持つ「迷いの無さ」や「ある程度完成された関係」はその描きぶりの潔さ、心地よさ、安心感が伴うことでその理屈抜きの説得力を以って、余分な情報で読み手を何ひとつ惑わせることなく、ただただ気持ちよく萌えさせてくれます。かといって安易だったりすることはなく、それらが作者のとても高いレベルの表現力によって成されていることは言うまでもないでしょう。

 どこから読んでも百合の旨味を感じられる本作。目にもありがたいオールカラーの豪華さも嬉しいところです。

 

百合百景 (MFC)

百合百景 (MFC)